病院長の西川晋右(にしかわしんすけ)と申します。少し遅すぎるご挨拶になりますが、自己紹介と、現在の浪打病院で進めている診療改革についてご説明させて頂きたいと思います。
令和2年4月、ちょうど新型コロナ感染が猛威を振るい始めた最中に浪打病院から院長としてお招き頂き就任致しました。
私の略歴に関しては、ホームページ内で別途、ご説明させていただいておりますが、弘前大学病院勤務を経たのちに、青森県立中央病院に赴任し、18年間、県病外科で主に消化器がん手術、特に大腸肛門病外科を専門として、約3000件を超える手術件数を担当させて頂きました。
県病に赴任した当初、下部直腸がんでは、肛門ごと直腸を切除し、永久的人工肛門を必要とする術式が約70%を占めておりましたが、肛門括約筋温存手術という新しい術式を導入し、赴任3年目で肛門温存率は95%に達して現在に至っています。この新術式については国立がんセンターとの共同研究にも参加し、今では県内の多くの公立病院でも行われるようになっています。
県病勤務期間に私は約11年間外科部長を拝命しておりましたが、その間に、吉田茂昭前青森県病院事業管理者の命で、現在県病にある、がん診療センターの立ち上げに参加させて頂きました。加えてICU部長、医療連携部長など複数の部長職を兼任させて頂きました。多忙の一言に尽きる毎日でしたが、ICUでは最新の緊急救命治療の経験、がん診療センター立ち上げでは、国立がんセンターとの連携により全国の病院、大学病院に多くの仲間ができたことは、私にとって現在も大きな宝となっています。
医療連携部長の経験からは、多くの問題点を感じることができました。この疑問が浪打病院からのオファーをお受けする大きな動機になったのですが、それは、医療連携が、病院間の横繋がりというよりも、県病のような急性期の基幹病院から受け手の病院への転院に主眼が置かれていることでした。基幹病院では、次々に高度医療を行わなければならないため、入院期間が長くできないのが現状ですが、転院の受け手になる民間病院にはそれぞれ得意、不得意な分野があるのも事実です。
そこで、私は浪打病院へ赴任してから、初めに県病、市民病院へ、入院受け入れ可能人数を毎日ライブでお伝えすることを初めました。紹介内容で、当院で対応が難しいと判断された場合には、医療連携部で得た経験からどこの病院がより適切ではないかという考えもお伝えするようにいたしました。
新型コロナ感染が猛威を振るっていた最中には基幹病院への受診が殺到し、基幹病院が本来果たさなければならない高度医療ができない状態となり、保健所からの緊急要請をお受けして、当院では一病棟全てコロナ患者重点病床として提出し、300余名の中等症〜重症例への入院対応も行いました。大変困難な治療ではありましたが、院内感染対策、インフルエンザ診察など様々な感染治療のノウハウの蓄積、院内感染対策高度化など、現在の診療において大きなメリットが生じたと思っています。
また、このコロナ病棟運営の経験からは、医療連携のあるべき姿が見えたような気がしています。コロナ治療では、個々の患者さんがさまざまな持病をお持ちのことが多く、多くの専門クリニックの先生の助言をいただくことができました。また、青森保健所が主導して定期的にビデオ会議がひらかれ、多くの民間病院との話し合いができ、まさに理想的な医療連携を体験することができました。
医療連携は単に基幹病院からの転院を受け入れるだけでなく、民間医療機関が得意分野に応じて柔軟に相談、紹介し合うのが理想的と考えております。もちろん、当院で治療を完結させるのが基本ですが、病状の変化に応じて、各種専門クリニックと相談しあえるネットワークを形成することが最も重要だと考え、現在も拡充に取り組んでいます。
基幹病院へ紹介する際には、紹介状を作成するだけでなく、当院医療連携室から受診の日時、時間までの予約を取れるようにシステム構築しました。また、入院後に自宅退院が難しい患者様には、介護申請から施設入居まで一貫して当院医療連携室で行なっています。
基幹病院の合併が行われた場合、これまで以上に受診患者数は増加することになり、混雑と待ち時間延長が避けられません。かかりつけ病院でできる限り検査や診断を行い、受診予約まで行うことで、基幹病院での治療開始までの過程がスムーズになるだけでなく、基幹病院での治療後の転院にも対応が容易になります。
現在、浪打病院では、新たに皮膚科も増設し、より総合的な医療を提供できるように整備を続けています。より最新で最適な医療を提供するとともに、他の医療機関とより広く協力関係を作って行きたいと考えておりますので、お気軽に受診ください。